青色申告承認申請書の落とし穴 — 出し忘れると赤字が繰り越せない

青色申告をするには、事前に「青色申告承認申請書」を税務署に出しておく必要があります。申告書と一緒に出すものではなく、その年が始まる前後に出しておく書類です。ここを逃すと、その年は白色申告になります。

そして白色になると失うのは10万円の控除だけではありません。賃貸で出た赤字を翌年以降に繰り越すこと自体ができなくなります。金額の大きい年ほど、この差は効いてきます。

やりがちな失敗

いちばん多い失敗は、確定申告の時期に「今年から青色にしよう」と考えること。3月に申告書を作りながら気づいても、その年分はもう白色です。もう一つは期限の起算点を勘違いすること — 原則は3月15日ですが、その年の1月16日以後に貸付けを始めた場合は「業務を開始した日から2か月以内」に変わります。

期限 — 6つのパターン

所得税法144条と国税庁の案内による提出期限です。

区分提出期限
原則青色申告の承認を受けようとする年の3月15日
新規開業(その年の1月16日以後に業務開始)業務を開始した日から2か月以内
相続で承継(被相続人が白色・1月16日以後承継)承継した日から2か月以内
相続で承継(被相続人が青色・死亡が1/1〜8/31)死亡の日から4か月以内
相続で承継(被相続人が青色・死亡が9/1〜10/31)その年12月31日
相続で承継(被相続人が青色・死亡が11/1〜12/31)翌年2月15日

「業務を開始した日」はいつか — 法令に定義がありません

2か月の起算点になる「業務を開始した日」について、法令および国税庁の案内はこの文言のままで、契約日・引渡日・賃料が発生した日のいずれを指すかを定義していません。物件の取得時期と貸付開始が離れている場合、判断が分かれ得ます。

期限を過ぎると取り返しがつかない書類なので、いちばん早く解釈できる日を起点に考えて早めに提出するのが安全です。ご自身のケースの起算日は、所轄の税務署にご確認ください。

返事は来ません — 「みなす承認」

申請書を出しても、承認の通知は基本的に届きません。所得税法147条により、承認を受けようとする年の12月31日(その年11月1日以後に業務を開始した場合は翌年2月15日)までに承認または却下の処分がなかったときは、その日に承認があったものとみなされます。音沙汰がないのは通った合図です。

出し忘れると何を失うのか

所得税法143条は、青色申告書で申告できるのは「税務署長の承認を受けた場合」としています。承認がなければその年は白色です。失うものは2つあります。

大規模修繕をした年や取得初年度など、赤字が大きい年に白色だと、その赤字はその年で終わります。赤字の年の扱いは赤字でも申告すべき理由の記事で詳しく解説しています。

やめるとき・取り消されるとき

青色申告をやめるには、やめようとする年の確定申告期限(翌年3月15日)までに「青色申告の取りやめ届出書」を提出します(所得税法151条1項)。業務の全部を譲渡・廃止した場合は、その翌年分以後、承認は自動的に効力を失います。

また税務署長は、次のいずれかに当たるとき、その年までさかのぼって承認を取り消すことができます(所得税法150条1項)。取消しは書面で通知され、該当する事由が附記されます。

  1. 帳簿書類の備付け・記録・保存が財務省令の定めに従って行われていないこと
  2. 帳簿書類について税務署長の指示に従わなかったこと
  3. 帳簿書類に取引の全部または一部を隠ぺい・仮装して記載したこと等

⚠️ 再申請には1年の制限があります

見落としやすい落とし穴です。所得税法145条3号により、取消しの通知を受けた日、または取りやめ届出書を提出した日以後1年以内に提出した申請書は却下され得ます。国税庁の審査基準にも同じ趣旨が書かれています。一度やめると、すぐには戻れません。

帳簿の保存期間

青色申告者は帳簿書類を原則7年間保存します(請求書・見積書・納品書・送り状など、5年間でよいものもあります)。なお記帳・保存の義務そのものは、青色・白色にかかわらず不動産所得を生ずべき業務を行う人に課されています。

損する / 得するサイン

次に当てはまるなら、いま確認すべきです。

こうすればOK

  1. 自分がどの期限パターンに当たるかを上の表で確認する。
  2. 起算日に迷うなら、いちばん早い日を起点に早めに提出する。
  3. 提出したら控えを保管する。承認の通知は届かない(みなす承認)ため、控えが唯一の記録です。
  4. 提出後は帳簿の備付け・保存を続ける(不備は遡っての取消し事由になります)。

この記事の根拠(一次情報)

内容数値・ルール出典時点
原則の提出期限承認を受けようとする年の3月15日国税庁 No.2070令和7年4月1日現在
新規開業の期限1月16日以後に業務開始なら、業務を開始した日から2か月以内e-Gov 所得税法144条現行
相続で承継した場合の期限被相続人が白色は承継から2か月以内/青色は死亡日により4か月以内・その年12月31日・翌年2月15日国税庁 No.2070(表(3)〜(6))・国税庁 A1-8令和7年4月1日現在(No.2070)/2026年6月30日(A1-8)
みなす承認12月31日(11月1日以後開業は翌年2月15日)までに処分がなければ承認があったものとみなすe-Gov 所得税法147条現行
白色の繰越範囲変動所得の損失(事業から生じたものに限る)・被災事業用資産の損失・雑損失に限られる国税庁 損失申告用の手引き令和7年分
取りやめの期限やめようとする年の確定申告期限(翌年3月15日)までに届出書e-Gov 所得税法151条1項現行
承認の取消し事由①帳簿書類の備付け・記録・保存の不備 ②税務署長の指示に従わない ③隠ぺい・仮装 → さかのぼって取消しe-Gov 所得税法150条現行
再申請の1年制限取消通知または取りやめ届出の日以後1年以内の申請は却下事由に当たるe-Gov 所得税法145条3号現行
帳簿の保存期間原則7年(請求書・見積書・納品書・送り状等は5年でよいものもある)国税庁 No.2070令和7年4月1日現在

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談ではありません。 具体的な判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。(令和8年7月時点の情報です)