不動産所得は会社にバレる?住民税の「普通徴収」で分けられる条件

賃貸を始めるとき、いちばん気になるのが「会社に知られないか」という点です。給与から天引きされる住民税は会社が計算に関わるので、家賃収入の分がそこに乗ってしまうのでは、という不安はもっともです。

結論を先に言うと、不動産所得の住民税は「自分で納付」を選んで分けられます。これは自治体の裁量ではなく地方税法に根拠のある扱いです。ただし、選んでも効かない場面があり、しかもそれが賃貸オーナーにとってよくある年に重なります。そこまで含めて確認しましょう。

やりがちな失敗

いちばん危ないのは、「普通徴収を選べば絶対にバレない」と思い込むこと。分けられるのは「給与以外の所得に対する住民税額」なので、その税額が発生しない年は分けるものがなく、全額が特別徴収に戻ります。もう一つは、選択は毎年必要だという点。一度選べばずっと続くわけではありません。

確定申告書のどこで選ぶのか

確定申告書の第二表、「住民税・事業税に関する事項」の中に 「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」 という欄があり、「特別徴収」(給与から天引き)か 「自分で納付」(普通徴収)を選びます。ここで「自分で納付」を選ぶと、不動産所得から生じる住民税は自宅に届く納付書で自分で払う形になります。

なぜ不動産所得は分けられるのか — 法律の根拠

地方税法321条の3第2項は、市町村が給与以外の所得の住民税を給与から特別徴収することを「できる」と定めた上で、申告書に普通徴収を希望する記載があるときは「この限りでない」としています。つまり選択の申し出が市町村の徴収権限を止める構造です。不動産所得は「給与所得以外の所得」なので、この対象に入ります。

⚠️ 副業とは事情が違う — ここが分かれ目

ニュースなどで「副業の住民税を分けられなくなる」と聞いた方もいるでしょう。実際、複数の自治体が給与に係る住民税は全額特別徴収にする運用へ移っています(中野区・富士市は令和8年度から、門真市は令和9年度から)。ただしこれは2か所目の給与の話です。地方税法が普通徴収を選べるとしているのは「給与所得以外の所得」なので、不動産所得はこの変更の対象外として明記されています。アルバイトの副業と賃貸経営は、ここで扱いが分かれます。

⚠️ 選んでも効かない3つのケース

「自分で納付」を選んでも、分けるべき税額そのものが出ない年は全額が特別徴収になります。中野区は次の3つを挙げています。

  1. 申告した所得がマイナスの場合(例:不動産所得 ▲10万円)
  2. 申告した所得より、追加で申告した控除(源泉徴収票に載っていない控除)の方が大きい場合
  3. 各種税額控除(ふるさと納税など)が、申告した所得から生じる住民税額より大きい場合

1つ目に注意してください。減価償却などで不動産所得が赤字になり、損益通算で所得税の還付を受ける——まさに還付が発生する年は、分けるべき住民税額が出ません。つまり還付を狙う年ほど、普通徴収は効きません。この記事で最も知っておくべき点です。

会社は「何の収入か」まで分かるのか

会社に届く「特別徴収義務者用」の税額通知書には、給与から差し引く税額だけが記載されており、所得の種類や金額、控除の内容は記載されていません(中野区)。

ただし、本人に渡される「納税義務者用」の通知書には所得や控除の内訳が含まれます。この通知書は会社を経由して本人に渡されるため、自治体は圧着加工などの保護措置をして送付しています。保護の運用は自治体によるため、「会社が収入の種類を知ることは絶対にない」とまでは言えません。

20万円以下なら住民税も申告不要、ではない

給与以外の所得が20万円以下なら所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。所得税の20万円ルールは住民税には無い、というのがよくある誤解の元です。詳しくはいくらから申告が必要かの記事で解説しています。

損する / 得するサイン

次に当てはまるなら、事前に確認しておく価値があります。

こうすればOK

  1. 確定申告書第二表の「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」で「自分で納付」を選ぶ。毎年必要です。
  2. 赤字の年は分ける税額が出ないことを理解しておく(還付は別に受けられます)。
  3. 運用は自治体ごとに異なります。徴収方法の詳細は、お住まいの市区町村にご確認ください。

この記事の根拠(一次情報)

内容数値・ルール出典時点
申告書第二表の選択欄「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」→「特別徴収」または「自分で納付」国税庁 申告書第一表・第二表令和7年分用様式
選択できる旨の解説給与・公的年金等以外の所得に対する住民税は徴収方法を選択できる国税庁 作成コーナーQ&A令和7年分申告
法的根拠地方税法321条の3第2項ただし書 — 普通徴収希望の記載があるときは特別徴収への加算は「この限りでない」e-Gov 地方税法現行
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談ではありません。 具体的な判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。(令和8年7月時点の情報です)