損益通算で給与の源泉税が戻るサイン(と戻らないケース)

賃貸経営が「赤字」と聞くと失敗のように聞こえますが、確定申告の世界では話が別です。減価償却費のような実際の出費を伴わない経費を差し引いた結果、帳簿の上では赤字になることは、健全な物件でも普通に起こります。

そしてサラリーマン大家の場合、この赤字は給与所得と相殺できます。給与からは毎月、所得税が源泉徴収(天引き)されているので、相殺した分だけ払いすぎた税金が還付金として戻ってくる——これが損益通算の仕組みです。

やりがちな失敗

いちばん多い失敗は、「赤字だから申告しなくていい」と思い込むこと。申告義務がないケースでも、申告しなければ還付は1円も発生しません。放置は「還付金を捨てている」のと同じです。次に多いのが、土地の借入金利子まで給与と相殺できると誤解して、還付額を大きく見積もりすぎるケースです。

損益通算とは

ある所得の赤字を、他の所得の黒字と相殺できる仕組みです。相殺に使える赤字は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つに限られています。サラリーマン大家の「不動産所得の赤字 × 給与所得」は、その代表例です。

なぜ「還付」になるのか

給与所得者の所得税は、毎月の給与から源泉徴収され、年末調整で精算されています。つまり給与だけで見れば納税は完了済み。そこに不動産所得の赤字を持ち込んで損益通算すると、1年分の所得が小さくなり、本来の税額が下がります。すでに納めた税額との差額が、還付金として戻ってくるわけです。

なお、申告し忘れた年があっても諦める必要はありません。還付を受けるための申告(還付申告)は、対象年の翌年1月1日から5年間提出できます。

戻らないケース — ここを正直に

不動産所得の赤字なら何でも相殺できるわけではありません。次の部分は損益通算の対象外です。

とくに土地利子の制限は、還付額の見積もりを大きく左右します。赤字の内訳を「土地利子の分」と「それ以外」に分けて考えるのが正確です。

赤字はどこから来るのか

実際の出費を伴わない最大の経費が減価償却費です。とくに中古物件は耐用年数を短く見積もれるため、帳簿上の赤字が出やすくなります。計算方法は中古マンションの減価償却の記事を、経費全体の拾い漏れは経費12項目の記事を参照してください。

損する / 得するサイン

還付が発生しやすい年のサインです。

逆に、土地割合が大きい物件をローンで買っている場合は、赤字が全額は相殺できない可能性があります。見積もりは控えめに。

こうすればOK

  1. 1年分の家賃収入と経費を集計し、不動産所得がプラスかマイナスかを確認する。
  2. マイナスなら、赤字のうち土地の借入金利子に相当する部分を除いて損益通算の対象額をつかむ。
  3. 確定申告で給与所得と通算する。過去の申告し忘れは、還付申告として5年分までさかのぼれる。

この記事の根拠(一次情報)

内容数値・ルール出典
損益通算できる所得不動産・事業・山林・譲渡の4所得の赤字のみ国税庁 No.2250
不動産所得の赤字の除外項目別荘等の貸付けの損失/土地取得のための借入金利子相当分/特定組合員等の損失国税庁 No.1391
還付申告の期間対象年の翌年1月1日から5年間国税庁 No.2030
土地利子の損益通算制限の根拠租税特別措置法 第41条の4e-Gov 租税特別措置法

書類をアップロードするだけで、損益通算後の還付額の目安が幅つきでわかります。

無料で試算する

← ガイド一覧に戻る

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談ではありません。 具体的な判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。(令和8年7月時点の情報です)