家賃収入の経費、どこまで落とせる?見落としがちな12項目
家賃収入の確定申告で、経費に入れたのは固定資産税と管理会社への支払いだけ——そんな申告書をよく見かけます。もったいない話です。不動産所得は「総収入金額 − 必要経費」で計算するので、計上できる経費を見落とすと、その分だけ所得が大きくなり、税金を払いすぎることになります。
一方で、何でも経費にしてよいわけでもありません。この記事では、賃貸オーナーが計上できる経費を12項目に整理し、「どこまでがOKか」の線引きを国税庁の一次情報とあわせて確認します。
やりがちな失敗
ありがちな見落としは3つ。①区分マンションの管理費・修繕積立金を入れ忘れる、②自宅で行う大家業務の通信費などを一切計上しない(または逆に全額計上してしまう)、③ローンの元本返済を経費だと思い込む——元本は負債の返済であって費用ではありません。経費になるのは利子部分だけです。
経費の基本ルール
必要経費に算入できるのは、収入を得るために直接要した費用と、その年に生じた販売費・一般管理費その他業務上の費用です。「賃貸経営のために使ったか」が判断の軸になります。
まず基本の5つ — 計上済みか確認
- 固定資産税・都市計画税 — 賃貸物件にかかる分。
- 損害保険料 — 火災保険・地震保険のその年分。
- 減価償却費 — 建物・設備の取得費を耐用年数で配分。多くの場合、経費の中で最大の項目です。計算方法は中古マンションの減価償却の記事で詳しく解説しています。
- 修繕費 — 原状回復のための修理・交換。
- 管理委託料 — 管理会社への集金代行・入居者対応の手数料。
見落としがちな7つ — ここが差になる
- 管理費・修繕積立金 — 区分マンションで管理組合に払う分。
- 入居者募集の費用 — 仲介手数料(入居者の募集・契約時)や広告料(いわゆるAD)。
- 借入金の利子 — 元本はNG、利子のみ。※土地部分の利子は経費にはなるものの、赤字のとき給与と相殺できない特例があります(後述の注意)。
- 交通費 — 物件の見回り・管理会社との打合せなどの移動。記録を残すのが前提です。
- 通信費などの家事関連費 — 大家業務に使う部分を明らかに区分できる場合、その部分だけ。
- 税理士報酬・申告関連費用 — 申告のために支払った報酬やソフト利用料。
- 共用部の水道光熱費 — 一棟持ちで共用部の電気・水道を負担している場合。
「按分」の考え方 — 自宅と兼用のものは区分してから
スマホ代や自宅の一室で行う事務作業のように、生活と業務が混ざった支出(家事関連費)は、業務に必要な部分を明らかに区分できる場合に、その部分だけ必要経費にできます。使用時間や面積など、説明できる基準で分けて記録しておくことが大切です。
経費にならないもの
- ローンの元本返済 — 費用ではなく負債の返済。
- 所得税・住民税 — 賃貸業務の費用ではありません。
- 自宅部分の費用 — 賃貸に出していない自宅の固定資産税や修繕は対象外。
また、借入金利子のうち土地の取得に対応する部分には注意が必要です。経費として所得の計算には入りますが、不動産所得が赤字になったとき、その赤字のうち土地利子に相当する部分は給与所得と損益通算できません。赤字の年の扱いは損益通算の記事で詳しく解説しています。
損する / 得するサイン
次に当てはまるなら、経費を取り逃している可能性が高いサインです。
- 申告書の経費欄が「固定資産税・管理料」など2〜3行で終わっている
- 区分マンションなのに管理費・修繕積立金が経費に入っていない
- 減価償却費を一度も計上したことがない
逆に、レシートを何でも100%計上している場合は、按分不足で後から否認される危険サインです。
こうすればOK
- 通帳・管理会社の精算書・保険証券・固定資産税の通知書を1か所に集める。
- 上の12項目に沿って支出を分類し、家事関連費は基準を決めて按分する。
- 迷った支出は「賃貸経営のために使ったか」で判断し、根拠の記録を残す。
この記事の根拠(一次情報)
| 内容 | 数値・ルール | 出典 |
|---|---|---|
| 不動産所得の計算式と主な必要経費 | 総収入金額 − 必要経費。主なもの:固定資産税・損害保険料・減価償却費・修繕費 | 国税庁 No.1370 |
| 必要経費の一般原則 | 収入を得るために直接要した費用+その年の業務上の費用 | 国税庁 No.2210 |
| 家事関連費の扱い | 業務に必要な部分を明らかに区分できる場合、その部分のみ算入可 | 国税庁 No.2210 |
| 土地取得の借入金利子 | 不動産所得の赤字のうち土地利子相当分は損益通算の対象外 | 国税庁 No.1391 |
レシートや精算書をアップロードするだけで、経費の分類と還付額の目安がわかります。
無料で試算する本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談ではありません。 具体的な判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。(令和8年7月時点の情報です)