建物・設備の耐用年数一覧と使い方 — 設備を分けると何が変わるか

減価償却の計算で最初に決めるのが耐用年数です。建物の構造で決まる年数は省令の別表に載っていますが、見落とされやすいのが建物附属設備——電気設備や給排水設備などを、建物本体と分けて償却できる(というより、分けるのが原則である)という点です。

設備の耐用年数は建物よりずっと短いため、分けられれば早く経費化できます。この記事では省令の区分どおりに年数を整理し、分けるための前提と、分けられない場合の考え方を確認します。

やりがちな失敗

ありがちな失敗は建物価格の全額を建物本体の耐用年数で償却してしまうこと。設備を分けていれば早く経費化できた分を、長い年数に薄く延ばしていることになります。逆に、契約書に内訳がないのに設備の金額を自分で見積もって分けてしまうのも危険です。分け方には根拠が必要で、国税庁が方法を示しているわけではありません。

住宅用の建物 — 構造別の耐用年数

減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一から、住宅用の建物の行です。カッコ内は定額法の償却率で、別表第八「平成十九年四月一日以後に取得をされた減価償却資産の定額法の償却率表」の値です。

構造(省令の表記)耐用年数
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造のもの(住宅用・寄宿舎用・宿泊所用・学校用・体育館用)47年(0.022)
れんが造、石造又はブロック造のもの(店舗用・住宅用ほか)38年(0.027)
金属造のもの(骨格材の肉厚が4mmを超えるもの)(店舗用・住宅用ほか)34年(0.030)
金属造のもの(骨格材の肉厚が3mmを超え4mm以下のもの)(店舗用・住宅用ほか)27年(0.038)
金属造のもの(骨格材の肉厚が3mm以下のもの)(店舗用・住宅用ほか)19年(0.053)
木造又は合成樹脂造のもの(店舗用・住宅用ほか)22年(0.046)
木骨モルタル造のもの(店舗用・住宅用ほか)20年(0.050)

読み方の注意が2つあります。①省令に「重量鉄骨」「軽量鉄骨」という言葉は出てきません。省令は「骨格材の肉厚」で区分しており、市場で重量鉄骨と呼ばれるものが肉厚4mm超(34年)、軽量鉄骨と呼ばれるものが4mm以下(27年・19年)に対応します。図面や仕様書で肉厚を確認するのが確実です。②鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の47年の行には「店舗用」が含まれていません(店舗用は別の行で39年)。他の構造は店舗用と住宅用が同じ行にまとまっています。

建物附属設備 — ここが分けどころ

同じ別表第一の「建物附属設備」の主な行です。

構造又は用途(省令の表記)/細目耐用年数
電気設備(照明設備を含む。)/蓄電池電源設備6年(0.167)
電気設備(照明設備を含む。)/その他のもの15年(0.067)
給排水又は衛生設備及びガス設備15年(0.067)
冷房、暖房、通風又はボイラー設備/冷暖房設備(冷凍機の出力が22kW以下のもの)13年(0.077)
冷房、暖房、通風又はボイラー設備/その他のもの15年(0.067)
昇降機設備/エレベーター17年(0.059)
昇降機設備/エスカレーター15年(0.067)
消火、排煙又は災害報知設備及び格納式避難設備8年(0.125)

省令の表記を正確に読んでください。「給排水又は衛生設備及びガス設備」は3つの資産ではなく、15年の1項目です。同じく「消火、排煙又は災害報知設備及び格納式避難設備」も8年の1項目です。

設備を分けるのは「原則」です

耐用年数の適用等に関する取扱通達2-2-1は、「建物の附属設備は、原則として建物本体と区分して耐用年数を適用するのであるが、木造、合成樹脂造り又は木骨モルタル造りの建物の附属設備については、建物と一括して建物の耐用年数を適用することができる。」としています。一括にできるのは木造等に限られた選択肢です。つまりRC造やSRC造の物件では、一括にする選択肢がそもそもありません。

所得税で建物と設備を分ける根拠は省令の側にあります。耐用年数省令1条1項1号は、所得税法施行令6条1号(建物及びその附属設備)に掲げる資産の耐用年数は別表第一によると定めており、その別表第一は「建物」と「建物附属設備」を別の種類の行として、別々の耐用年数で掲げています(所得税法施行令129条も、耐用年数は財務省令で定めるところによるとしています)。それぞれの年数を適用するのは、この省令の作りから出てくることです。なお上の2-2-1は形式上は法人税の通達(直法4-25。省略用語例で「法」は法人税法)であり、所得税側の根拠としては省令を見てください。

なお建物内部の造作は、建物附属設備に該当する場合を除き、区分せず建物に含めて建物の耐用年数を適用します。

⚠️ 契約書に内訳がない場合 — 分け方の定めはありません

設備を分けるには、設備部分の金額が必要です。売買契約書や工事費内訳書に内訳があればそれが根拠になります。一括金額しか記載がない場合、建物と建物附属設備の金額の分け方について、国税庁は方法を示していません。

固定資産税評価額の比率や工事費の比率といった方法が語られることがありますが、この区分のための方法として示された一次情報は見つかりません。「建物の標準的な建築価額表」も、その表自身が譲渡所得の計算で土地と建物を分けるためのものと明記しており、建物と設備の区分に流用できる根拠はありません。内訳が取れない場合は、税理士または所轄の税務署にご相談ください。根拠のない見積りで分けるのは避けるべきです。

分けても償却方法は変わりません

誤解されやすい点です。建物は平成19年4月1日以後の取得なら定額法で、建物附属設備も平成28年4月1日以後の取得は定額法のみになっています(それ以前の取得は定額法・定率法の選択がありました)。所得税法施行令120条の2第1項1号が、平成28年3月31日以前に取得された資産のうち建物を除いたものにだけ定率法を認め、それ以外は定額法とする作りになっているためです。したがって設備を分けて得られるのは耐用年数が短いことだけで、定率法が使えるようになるわけではありません。

中古なら簡便法を設備にも別々に

中古で取得した場合の簡便法は、省令の条文が「当該資産の耐用年数」としており、資産ごとに適用します。建物と設備は別表第一で別々の法定耐用年数を持つため、それぞれの法定耐用年数で簡便法を計算します

例:築20年のRCマンションで設備を分けた場合。建物は 47 − 20 + 20 × 20% = 31年。電気設備(その他のもの)は法定15年を全部経過しているので 15 × 20% = 3年。同じ経過年数でも、法定耐用年数が違うので結果が変わります。計算は減価償却の記事の計算ツールで確認できます。

なお簡便法には制限があります。省令3条1項ただし書は「当該資産を個人の業務…の用に供するために当該資産について支出した…資本的支出…に規定する金額が当該資産の取得価額…の百分の五十に相当する金額を超える場合には、第二号に掲げる年数についてはこの限りでない」としています。基準になるのはその資産を業務の用に供するために支出した資本的支出であり、その後の年に行った改修まで含むわけではありません。また計算結果が2年未満のときは2年とします。工事が資本的支出か修繕費かの判定は修繕費と資本的支出の記事を参照してください。

損する / 得するサイン

次に当てはまるなら、償却の設定を見直す価値があります。

こうすればOK

  1. 売買契約書・工事費内訳書で、建物と建物附属設備の内訳があるか確認する。
  2. 鉄骨造なら図面・仕様書で骨格材の肉厚を確認する。
  3. 内訳があれば、それぞれの法定耐用年数で(中古なら簡便法で)償却年数を出す。
  4. 内訳が取れない場合は、根拠のない按分をせず税理士または税務署に相談する。

この記事の根拠(一次情報)

内容数値・ルール出典時点
住宅用建物の法定耐用年数SRC・RC造47年/れんが・石造・ブロック造38年/金属造 肉厚4mm超34年・3mm超4mm以下27年・3mm以下19年/木造・合成樹脂造22年/木骨モルタル造20年e-Gov 耐用年数省令 別表第一令和8年財務省令第29号による改正後(別表は令和7年版と同一)
省令の区分表記「重量鉄骨」「軽量鉄骨」の語は省令になく、「骨格材の肉厚」で区分e-Gov 耐用年数省令 別表第一同上
SRC・RC造47年の対象住宅用・寄宿舎用・宿泊所用・学校用・体育館用(店舗用は別行)e-Gov 耐用年数省令 別表第一同上
建物附属設備の法定耐用年数電気設備(照明含む)蓄電池電源6年・その他15年/給排水又は衛生設備及びガス設備15年/冷暖房設備(22kW以下)13年・その他15年/エレベーター17年・エスカレーター15年/消火・排煙・災害報知・格納式避難設備8年e-Gov 耐用年数省令 別表第一同上
定額法の償却率別表第八「平成十九年四月一日以後に取得をされた減価償却資産の定額法の償却率表」に定める償却率(耐用年数nに対し1/nを小数第3位で切り上げた値と一致)e-Gov 耐用年数省令 別表第八同上
建物と附属設備の区分原則として区分して耐用年数を適用。木造・合成樹脂造り・木骨モルタル造りの建物の附属設備のみ一括可(選択)。形式上は法人税の通達(直法4-25、省略用語例で「法」=法人税法)耐用年数の適用等に関する取扱通達 2-2-1ページ更新 2024年1月18日
建物と建物附属設備が別年数である所得税側の根拠所令6条1号(建物及びその附属設備)の資産の耐用年数は別表第一による。別表第一は「建物」と「建物附属設備」を別の種類の行として別々の耐用年数で掲げる(所令129条=耐用年数は財務省令で定めるところによる)e-Gov 耐用年数省令 1条1項1号・別表第一e-Gov 所得税法施行令129条省令は令和8年改正後/所令129条は現行
建物内部の造作建物附属設備に該当する場合を除き、区分せず建物に含める耐用年数の適用等に関する取扱通達 1-2-3ページ更新 2024年1月18日
償却方法建物は平成19年4月1日以後取得で定額法。建物附属設備は平成28年4月1日以後取得は定額法のみ(1号は平成28年3月31日以前取得の「建物を除く」資産にだけ定率法を認める)e-Gov 所得税法施行令120条の2第1項1号国税庁 No.2109所令は現行/No.2109は令和7年4月1日現在
中古の簡便法は資産ごと条文は「当該資産の耐用年数」— 建物と設備はそれぞれの法定耐用年数で計算e-Gov 耐用年数省令 第3条第1項令和8年改正後(算式は不変)
簡便法の除外・下限ただし書は「当該資産を個人の業務…の用に供するために…支出した」資本的支出が取得価額の50%超のとき同項2号(簡便法)を不可とする。取得後の任意の改修ではない/2年未満は2年e-Gov 耐用年数省令 第3条第1項ただし書同上

売買契約書をアップロードすれば、建物と設備の内訳から償却年数の目安を整理できます。

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談ではありません。 具体的な判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。(令和8年7月時点の情報です)